Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

「経済学説史2」採点結果 +釧路集中講義シラバス

昨日に引き続き、入試業務と期末試験採点業務。後者がようやく終了。結局4日かかった。こんな結果になった。

履修者318 / 受験者287 / 秀17 / 優49 / 良67 / 可149 / 不可5 (受験者の合格率98.2%)

これを過去の採点結果と比較してみたい。

  • 2017年度:履修者297 / 受験者280 / 秀14 / 優30 / 良63 / 可140 / 不可33 (受験者の合格率88.9%)
  • 2016年度:履修者233 / 受験者221 / 秀7 / 優22 / 良56 / 可121 / 不可15 (受験者の合格率93.2%)
  • 2015年度:履修者178 / 受験者165 / 秀3 / 優24 / 良61 / 可65 / 不可12 (受験者の合格率92.8%)

今年度がここ数年でいちばん高い合格率を示している(例年になく「大甘」)が、それには理由がある。4回生(以上)の答案のできがかなりひどかったからである。昨年度までの感じで採点すると、4回生(以上)の受験者25名のうち12名が不合格に該当してしまう。彼らは(ミニッツペーパーを全4回のうち1回も提出していないので)おそらく一度も講義に出席しておらず、ミニッツペーパーの提出によって「下駄を履かせる」余地もない。どうすべきかなり迷ったが、ここで不合格となり留年した学生が心を入れ替えて熱心に勉強するとは思えず、単に就活をやり直す(+バイト?)だけの1年を過ごすことがほとんど目に見えていることもあって、形式要件を満たしており勉強した痕跡が見られれば、文意が不明瞭でも、誤字脱字のオンパレードでも、(僕自身としては不本意ではあるが)60点(可)を与えることにした。可の答案の大半は、求められている論評が論評になっておらず、単なる教科書の要約か感想の羅列であり、本当は不可にしたいのだが、ここはぐっとこらえた。4回生だけを特別扱いするわけにはいかず、同じ基準を3回生以下にも適用したために、ただでさえ高い合格率がさらに上がった。5名が不可になったのは、「問題とまったく関係のないことを書いている」「2問のうち1問しか答えていない」「禁止されているネット情報を利用している」「制限字数を無視している」といった形式要件の不備が理由である。ただ、嘆かわしいことばかりでもない。秋学期最初の授業を春学期末試験の講評に充てたのだが、そこでどのように書けば高い評価を得られるのか(or加点対象にならないのか)を実例を挙げて詳しく説明した。その時の授業内容をきちんと理解できた学生は、その理解を答案に反映させてくれたようで、おそらくその結果として、秀や優の比率はここ数年でいちばん高くなった。これはうれしい傾向である。秀の答案の大半が、講義内容を正しく理解しているだけでなく、講義担当者に新しい気付きを与えてくれるほどの水準に達していた。ゼミ生の履修(受験)者は5名だが、もちろん全員合格(可はおらず良以上)で、1名(FKHRさん)が秀であった。

ちなみに、僕が千里山に勤務し始めた約20年前、僕の講義の合格率は約50%であった。現在の良をかつての可に、優を良に、秀を優に読み替えてもらえれば、20年前の成績分布がおわかりいただけるはずだ。成績評価の基準は実は20年前から本質的に変わっていない。かつての不可を救済可能な不可と救済不可能な不可に分けて、現在では前者を可と読み替えているにすぎない。

人数が多いので成績入力にも時間がかかるが、18時前に終える。

それから、今夏予定の釧路公立大学集中講義のシラバス校正&教科書発注(生協HP)。こんなシラバスである。「特殊講義」と銘打たれていることもあって、現在自分が研究を進めているトピックに引き付けた専門性のかなり高い内容の講義をやらせてもらえることになった。ものすごくやりがいを感じている。やはり学者である以上、単なる通説の紹介に終始せず自分の研究をできるだけ多く講義に反映させたいものだ。日程は9月11-13日か15-17日のどちらかで現在調整中のようだ。

[授業科目名] 経済史特殊講義B


[配当年次] 3・4年


[開講時期] 後期(集中)


[単位数] 2単位


[担当教員名] 中澤 信彦


[テーマ] 18世紀イギリス帝国の政治・経済・社会構造の思想史的考察


[キーワード] エドマンド・バーク、イギリス帝国、アイルランドアダム・スミス、共感、経済学の生誕


[授業内容] 本講義では、『フランス革命省察』(1790)によって「保守主義の父」として名高いアイルランド出身の政治家エドマンド・バーク(1729/30-97)が政界進出以前(文芸評論家時代)に著した初期の美学論考『崇高と美の起源』(1757)をとりあげ、そこに表出する政治観・経済観・社会観を丁寧に読み解くことを通じて、彼の生きた18世紀イギリス帝国の政治・経済・社会構造についての理解を深めます。アイルランドに対するイギリスの過酷な植民地支配がバークの思考に及ぼした影響にとりわけフォーカスを当てます。また、「共感」をキーワードとして『崇高と美の起源』とアダム・スミス道徳感情論』(1759)との比較考察を行い、「経済学の生誕」をめぐる思想状況についての理解を深めます。


[到達目標] a)18世紀イギリス帝国の政治・経済・社会構造の特質を『崇高と美の起源』の内容と関連づけて説明できる。
b)「経済学の生誕」において「共感」の果たした役割を『崇高と美の起源』の内容と関連づけて説明できる。


[授業計画(スケジュール)]
1 バークの生涯
2 バークとアイルランド
3 バークとアダム・スミス
4 『崇高と美の起源』第1部
5 『崇高と美の起源』第1部
6 『崇高と美の起源』第2部
7 『崇高と美の起源』第2部
8 『崇高と美の起源』第3部
9 『崇高と美の起源』第3部
10 『崇高と美の起源』第4部
11 『崇高と美の起源』第4部
12 『崇高と美の起源』第5部
13 『崇高と美の起源』第5部
14 『崇高と美の起源』「趣味に関する序論」
15 バーク、イギリス帝国、経済学の生誕―全体のまとめ


[予習と復習] a)高等学校「世界史」レベルのイギリス史に関する基本知識を予習しておいてください。
b)その日に講義された内容はその日のうちに復習して、理解を確かなものにして、次回(翌日)の講義に臨んでください。


[評価基準] ミニッツペーパー(2回:各15点)と筆記試験(持ち込み可)の点数(70点満点)の合計で評価します。


[教科書] ホレス・ウォルポールエドマンド・バーク『オトラント城/崇高と美の起源』(研究社)


[参考書] 中澤信彦・桑島秀樹編『バーク読本―〈保守主義の父〉再考のために』(昭和堂
佐藤光・中澤信彦編『保守的自由主義の可能性―知性史からのアプローチ』(ナカニシヤ出版)


[備考] 気楽で和やかな雰囲気の講義にしたいと思っていますので、そうした雰囲気が壊れないよう、真に関心のある者の熱心な受講を切に望んでいます。質問は各回の授業の終了後に受け付けます。

【6930】 腹筋2セット、スクワット1セット。