Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

レーニンの思想の面白さ

終日、研究室で授業準備(講義レジュメ作成)。コロナ禍の影響で英語演習が不開講となり、代替科目を担当する必要が生じた。そこで、目下研究中のテーマ(マルサス経済学の国際的展開)を「経済学特殊講義(上級経済学説史)」と銘打って講義することにしたわけだが、学部生にもわかるように噛み砕いた文章で講義レジュメを作成するのが思った以上に大変である。もちろん、自分の理解を確かめる意味では、ものすごく役立っているが。ここ2, 3週間格闘していたのは、マルサス批判に関するマルクスからレーニンへの継承をめぐる問題。レーニンの思想は、思想単体では理解が難しく、彼が生き抜いた時代のロシア社会というコンテクストと照合する必要があるので、近代ロシア史の全面的な復習が必要になった。「ナロードニキ?」「血の日曜日?」「臨時政府?」「四月テーゼ?」 細部をかなり忘れているので、なかなか進まない。調べることそれ自体は楽しい作業なのだが、妻の入院のために自由時間が激減しているので、どうしても時間との戦いになってしまう。ただ今日は、5限の20期ゼミが学園祭で休講になり、誰にも邪魔されずに目の前の仕事に集中できた。図書館での調べものもできて、大いに捗った。

レーニンは53歳で亡くなっている。今の僕と何と1歳しか違わない。研究者でなく革命家。人生の大半が亡命生活。それでいて、レーニン全集が40数巻って、ちょっとありえない。バケモノだわ。すべてにおいてスケールが違う。僕はもともと激動する経営環境の中で苦悩する経営者を描いた企業小説が好きなのでで、ひとたびレーニン(や毛沢東)を追いかけ始めると、「事実は小説より奇なり」としか思えず、善悪好悪をこえて「もっといろいろ知りたい!」になってしまう。自分たちの世代でレーニン(や毛沢東)の経済思想の研究者はほぼ皆無と言ってよい状況だが、一世代前の研究者にとっての常識を自分が知らないままなのは悔しいし、できればそれをきちんと理解して次世代にバトンタッチしたい。ロシアの人口政策との関連で「マルサスとレーニン」という問題設定が可能であれば、汗牛充棟たるレーニン研究史において、こんな自分でも何か新しいことを1つくらい言えるかもしれないし、近年沈滞しているこの領域の研究の活性化に寄与できるかもしれない。最近の学生は、部活・サークル・バイトなどとの関係で、リーダーシップ論や組織論などがかなり好きそうなので、うまく誘導してやれば、レーニン(や毛沢東)の思想に様々な現代的意義を感じてくれるかもしれない。だからこそ、学生の興味関心を少しでも喚起できるような良い講義をやりたいわけだな。もちろん、その「毒」の部分もきちんと伝えながら。

そんなわけで、絶賛読書中!

レーニンーー二十世紀共産主義運動の父 (世界史リブレット人)

レーニンーー二十世紀共産主義運動の父 (世界史リブレット人)

  • 作者:和田 春樹
  • 発売日: 2017/06/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

現代史を学ぶ (岩波新書 新赤版 (394))

現代史を学ぶ (岩波新書 新赤版 (394))

  • 作者:溪内 謙
  • 発売日: 1995/06/20
  • メディア: 新書

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