Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

今日のBGM

1974年11月に発表された第3期Deep Purpleの2枚目かつ最後の作品。できばえに不満だった看板ギタリストRitchie Blackmoreは本作をもって脱退する。こうした悲劇的なエピソードゆえに低い評価を与えられがちの本作であるが、僕はパープルの数ある作品のうちで一、二を争う傑作だと見ている。

ファンキーでソウルフルなテイストが強い本作を「パープルらしくない」と感じるファンが多いのだろう。しかし、もともと僕はIan GillanにもRitchieにも思い入れがない。偏愛するDavid Coverdale(通称デビ・カバ)のヴォーカルのきばり具合が最高だというだけで、かなり贔屓目に見てしまっていることは事実だ。‘Stormbringer’と‘Lady Double Dealer’は、‘Burn’にテイストの近い、疾走感あふれるハードなナンバー。デビ・カバはよくきばってくれている。トイレで聴けば便通がよくなるかも。そして、アルバムの最後は‘Soldier of Fortune’でトドメ。この泣きのバラードは、Loudnessの名曲‘Ares' Lament’*1を、そして時に山本譲二の「みちのくひとり旅」すら想起させる(?)。日本男児にぴったりのロックだ。(ちなみに‘Stormbringer’のヴォーカル・ラインとQueenの‘We Will Rock You’のリズム・パターンを合体させると、Def Leppardの‘Pour Some Suger on Me’になる。)

もちろん、聞きどころはこの3曲以外にも盛りだくさんだ。僕はGlenn Hughesの金切り声が好きになれないが、‘Holy Man’は彼の声質を最大限に生かした佳曲だ。‘High Ball Shooter’のキーボードのバッキングなどは、Stevie Wonderを聞いているかのよう。ヴァラエティに富んだ「黒い」アルバムだ。指向性の異なるメンバーの情念のぶつかりあいが素晴らしい緊張感を生み出している。何度聴いても飽きない。きちんと評価すべき作品だと思う。

本作のジャケットを見て、僕は映画「オズの魔法使」の冒頭シーンを連想した。少女ドロシーと愛犬トトは竜巻に巻き込まれて家ごとマンチキン・ランドへと運ばれてしまう。その時の竜巻だ。RitchieはPurple脱退後、自身のバンドRainbowを結成する。ライブのオープニング曲は、「オズ」の挿入歌‘Over the Rainbow’だった。ジャケットの絵と何らかの関係があったのだろうか?もっとも、ペガサスの意味はよくわからないのだけれど。

嵐の使者

嵐の使者

*1:アルバムDisillusionに収録