Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

今日のBGM

シアトル出身のプログレッシブHR/HMバンドが88年に発表した3枚目のフルレンス・アルバム。僕はこのアルバムを(と言うよりこのバンドを)リアルタイムでは聞いていない。雑誌‘Burrn!’が「疑いなくロック史上に残る名盤」と褒めちぎっていたので、今年の5月に試しに買ってみた。一聴しただけでは、なかなかピンとこないが、聞き返すたびに新しい発見がある。タネも仕掛けもある「するめ」アルバムだ。

音像がRushのアルバムPower WindowsやCounterpartsに似ているなと思っていたら、プロデューサーが同じPeter Collinsだった。3曲目‘Revolution Calling’の曲頭のギターリフは、‘2112: Grand Finale’に似ているし、13曲目‘Waiting for 22’などは、「Alex Lifesonがゲスト参加して弾いている」と言われれば信じてしまうRushファンも多いことだろう。*1楽曲間のクロスフェイドや効果音の多用はまさしくPink Floyd(特にWall)だ。8曲目‘Suite Sister Mary’のコーラスはもろ‘Atom Heart Mother’だ。7曲目のギターリフはLed Zeppelinの‘Kashmir’からの影響が濃厚だな。*2

このように本作には偉大なロックの先人たちのイディオムが多用されている。しかし、単なる借用に終わらず、*31+1を3にしてしまうような化学反応を起こすくらいにまで、しっかりと吸収・消化している。HR/HMファンが聴いても、プログレ・ファンが聴いても、必ずや心を動かされる「何か」が満載なのだ。聞き流せないようにプロダクションがなされている。

Dream Theaterはクイーンズライチの正統な継承者だと思う。DTの名作Metropolis Part2 は、冒頭部分に関して言えば、まるで本作と双子のようだ。しかし、クイーンズライチはDTほど装飾過多ではない。80年代ということもあって、ドラムの音に相当なイコライジングがなされていて不自然なのが残念だが、それを除けば、ロックの原初的なダイナミズムやヴォーカルのメロディ・ラインの美しさにおいては、むしろクイーンズライチのほうがDTに勝っているのではないだろうか。Geoff Tateの完璧と言ってもよいヴォーカルが、美しいメロディ・ラインをいっそう引き立てている。

ちなみに、瑣末なことかもしれないが、僕は本作のベースの音がとても好きだ。Crimson時代のWettonのベースのような、曲全体を重戦車のようにグイグイと引っ張っていくような音だ。リマスターされて音像がよりクリアになっているために、こうした印象がいっそう強まるのかもしれない。

オペレーション:マインドクライム

オペレーション:マインドクライム

*1:面白いことに、本作のリリースから5年後の1993年に発表されたRushのアルバムCounterpartsの2曲目‘Stick It Out’の曲調は、本作のタイトル曲(4曲目)と瓜二つだ。逆輸入があったのか?

*2:もっとも、‘Kashmir’のギターリフはクラシック中のクラシックなので、他にも数多くのバンドがリスペクトしている。Def Leppard,‘Paper Sun’、Whitesnake,‘Judgement Day’など。

*3:StarcastleなどはYesからの「借用」の水準に留まっていると思う。