Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

相関社会科学研究会@東京大学駒場キャンパス

東大駒場


東京遠征初日。

持参する書籍や書類を選定するのに意外と手間取る。11時半過ぎに京都の自宅を出る。12時30分京都駅発の新幹線に乗る。

新幹線の中では、月曜日授業の予習、N本君(新M1)の学部卒論をコメントを付しながら精読する。日曜日の(拙著以外のもう一つの)合評対象本である『功利主義と経済学―シジウィックの実践哲学の射程』も読む。

品川、渋谷を経由して、京王・駒場東大前駅に15時半に到着。世話人のI上さん(ホルモン仲間)が改札まで迎えに来てくださった。

事務書類の処理が終わっても、研究会開始まで30分以上あったので、I上さんに駒場のキャンパスを案内していただく。

時計台など歴史を感じさせる建造物が数多く目に留まる。ただ、廃寮となった駒場寮をこの目で見ることができなかったのが残念だ。記憶が定かでないのだが、高校生か浪人生だった時に、高校のクラブの先輩のS廣さんかHS川さんを駒場に訪ねて、その際に駒場寮を案内してもらったことがある。あまりのカオス度の高さに仰天した。野田秀樹如月小春の原点をもう一度この目で見ておきたかった。寮の跡地は現在こんな感じになっている。さびしいわぁ。

写真ではわかりにくいだろうが、この並木道はとても美しい。ただ、秋が深まると、銀杏の匂いで大変らしいが。

16時半から相関社会研究会。すでに書いたように、拙著『イギリス保守主義の政治経済学―バークとマルサス』の合評会である。「思考する格闘技」のM原先生とは初対面だったが、眼光が鋭くて*1かなり緊張した。

M原ゼミの院生2名(Y本さん&T川さん)による拙著の丁寧な内容概説の後、M原先生のコメント、僕のレスポンス、フロアの方々も含めた自由討論という順番で研究会は進められた。初参加の研究会なので、僕自身は比較の基準を持っていないが、I上さんによれば、近年まれに見る盛況ぶりだったとか。関西を出たことのない無名のローカル学者の最初の本の合評に、二十数名もの方々が出席してくださった。18時半に終了する予定が、活発な議論が途絶えず、結局終了したのは19時半を過ぎていた。

拙著の主張(学問的貢献と信じているもの)については、概ね読者に理解されているようで安心した。僕自身が禁欲した現代の思想状況への含意だが、それは歴史概念としての保守主義と方法概念としての保守主義を丁寧に分けて議論することで導き出せると考えている。歴史概念としては「保守する態度」しか存在せず(バークもマルサスも「保守主義」という言葉を用いていない)、保守すべき対象は時代・空間によって異なる。18世紀末のイギリスにおいて、その保守すべき対象は「イギリスの国制」「文明(商業)社会としてのイギリス」であったが、21世紀の日本において、その対象に相当するものは一体何であるのか? それを丁寧に議論しなければならない。「伝統的なもの」といったような単純な理解が許されないことを、バークやマルサスの議論から我々は学ぶ必要がある。これ以上書くと論文になってしまうので書かないけれども、研究会で頂戴した質問の大半は僕自身がこの十数年間に考えてきたことなので、自分の思索の方向が誤っていなかったことを確認できて、喜びと安心を得られた研究会であった。

1次会・2次会は渋谷。2次会終了時点で終電の時刻は過ぎていた。M原先生の本拠地である阿佐ヶ谷での3次会に誘われたので、「これからが本番!」とばかりに参戦させていただく。おそろしくおいしいモツ鍋を味わう。*2ただ、3時前あたりに体力と気力の限界を感じて、切り上げさせていただく。M原先生他数名は4次会に突入したらしい。学問するには体力が要るね。僕は水道橋のホテルのベッドに横になって、すぐさま寝入っていた。4時前くらいだったはずだが、もはや意識が朦朧としており、記憶が定かでない。

*1:僕の勝手な思い込みのようだ。ゼミ生はそう感じていないらしい。

*2:I上さんのホルモン好きはM原ゼミの伝統なのか?