Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

つかこうへんさん逝く

10日、劇作家・演出家のつかこうへいさんが亡くなられた。学生時代の僕は如月小春さん(故人)のお芝居を偏愛していて、つか作品の熱心なファンでなかったけれども*1、僕のように80年代に芝居生活を送った者なら誰でも、つか作品に対して好き嫌いをこえた特別な感慨を抱かずにいられないはずだ。それくらい特別な巨大な存在だった。

僕は中1の冬(1982年)にひょんなことから演劇部に入部してしまい、それ以降、高校でも大学でも(大学院でも少しだけ)演劇活動に関わることになった。周囲につか作品のファンが多かったせいで、積極的に見ようとしたわけでもないのに、気がつけば何本も見てしまっている。つか作品との初めての出会いはおそらく高1か高2だったように思う。高校演劇祭(大会)の中播地区予選で、姫路工業高校演劇部による「出発」「熱海殺人事件」を見た。「劇」よりも「芝居」という言葉のほうがしっくりする濃密な舞台(当時はその濃密さがどこから来るのかよくわからなかったが)に衝撃を受けた。大学進学後、さらに大きな衝撃を受けたのは、劇団MOPによる大作「広島に原爆を落とす日」を見た時だ。役者の発散するエネルギーのあまりに大きさゆえに、自分の精気を吸い取られそうな気分になった。舞台ではないが、風間杜夫大竹しのぶ主演の映画「青春かけおち篇」は戦後日本映画史に残る傑作の一つだと思う。

62歳。班がん。父とほとんど同じだ。僕の父も62歳まであと3か月というところで肺がんにより永眠した。奇妙な符合である。ご冥福をお祈りしたい。

熱海殺人事件 (角川文庫 (5980))

熱海殺人事件 (角川文庫 (5980))

*1:それはおそらくつか作品の根底に「怒り」があったからだろう。昔も今も僕は怒りを表現することが本当に苦手だから、生理的に合わなかったのだと思う。