Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

休ま(め)なかった盆休み

本日夕刻、茨木自宅に帰還する。

この夏のうちに単著の原稿(初稿)をどうしても仕上げたい。仕上げられないと、完成が年末年始にずれこんでしまいかねない。勝負の夏なので、PCを持参して帰省する。時間を見つけては執筆に励んだ。盆休みはほぼ完全に返上した。

『イギリス保守主義の政治経済学--バークとマルサス--』(仮題)の構成は、今のところ、こんな感じになっている。

  • 序章 本書の主題・方法・構成

   第一章 イギリスにおけるフランス革命--バークとマルサスを中心として--

  • 【第二部 バーク研究】

   第二章 バークの経済思想--『穀物不足に関する思索と詳論』の分析--
   第三章 バーク文明社会論の原型--アングロ・アイリッシュ青年文士の苦悩--
   第四章 バークにおける革命概念と時間認識--ペインとの対比--
   第五章 バークにおける政治家の条件--共和主義思想との関連で--

   第六章 マルサスの政治思想--フォックス派ウィッグとしてのマルサス?--
   第七章 マルサスのスミス受容(一)--『人口論』初版を中心に--
   第八章 マルサスのスミス受容(二)--『穀物高価論』から『経済学原理』へ--

   第九章 真のエコノミストと偽のエコノミスト--「政治経済学」とは何か?--
   第十章 階層秩序と経済循環--「存在の連鎖」の世界像の受容と変容--

全11章(序章+本論10章)から構成される(最終的には「参考文献一覧」なども付加される)。帰省前に序章を仕上げたが、帰省中に一気に5つの章を仕上げた。もっとも、手をつけたのは文体の統一などの微修正ですませられる章ばかりだったが。現時点での字数(注込み)は、序章=12,000字、第四章=16,000字、第五章=24,000字、第六章=20,000字、第七章=22,000字、第十章=22,000字となっている。(←自分自身へのメモ)

分量だけであれば、五合目まで登っているように見えるけれども、実際はまだ三合目くらいだろう。二章や三章は元になっている論文が大学院生時代に書かれたものなので、抜本的な大改訂が必要だ。改訂には相当な時間を要するように思う。頂上はまだまだ遠い。

論文を書くという仕事が短or中距離走であるとすれば、一冊の本にまとめるという仕事は長距離走のようなものだと思う。まったく勝手の違う別の仕事だ。論文の場合、数日間集中して一気呵成に取り組めば、ゴールが見えてくる場合も多い。ところが、本の場合、一歩一歩着実に歩みを進めていても、なかなかゴールが見えないものだから、まったく進んでいないように思えて、途中で焦ったり、気が滅入ったりしてくる。このような精神面の不調こそが最大の難敵だ。

経済思想と政治思想という専門分野の違いはあるが、昨年、同い歳の研究者であるK大のY中さんが『ハイエクの政治思想』と題する立派な単著を上梓された。実は、Y中さんも僕と同じようにブログ(教育・研究日記)をやっておられた関係で、ちょうど一昨年の今頃、単著執筆のご苦労をリアルタイムに知ることができた。それが今になって大きな励みになっている。まさしく「追体験」しているわけだ。Y中さんご自身が単著の執筆・出版を「これまでの私の人生のなかで、最も大きな仕事だったように思う」と書いておられるが、僕にとっても(まだ書き上げていないけれども)同じことが言えるように思う。プレッシャーの質がこれまでと全然違う。質的には修士論文執筆時のプレッシャーにかなり近い。

やりたいことはたくさんあるけれども、とにかく今は、禁欲、禁欲。同僚Y本さんも盆休みを返上して頑張っておられるようだ。