先日脱稿・提出したばかりのビジネス倫理論文では、『国富論』や『道徳感情論』といった経済思想史上の文献と並んで、二編の文学作品を利用している。一つがドストエフスキー『死の家の記録』で、もう一つがマーク・トウェイン『トム・ソーヤーの冒険』だ。前者は工藤精一郎訳(新潮文庫)、後者は石井桃子訳(岩波少年文庫)を利用した。締切を一ヶ月もオーバーしていた関係で、訳文を原文と照合する作業を欠いたまま原稿を提出した。初校ゲラが出るまでに、その照合作業を終えておきたいと思い、勤務先の図書館に原文を求めた。
千里山大学附属図書館の蔵書の充実は早慶にも劣らないほど立派だと言われるが、実際のところ、どちらの原典も所蔵されていた。『トム・ソーヤー』はすぐに見つけられたが、『死の家』のほうは少し手間がかかった。蔵書検索画面を前にして、ロシア語入力の仕方がなかなかわからず、司書さんのアシストを求めた。ヒットした画面でもロシア(キリル)文字が英語のアルファベットに変換表記されていたため、すぐにわからなかった。『死の家の記録』の原タイトルは『ЗАПИСКИ ИЗ МЕРТВОГО ДОМА』*1なのだけれど、それが『ZAPISKI IZ MERTVOGO DOMA』と表記されていたためだ。
原文と訳文を照合してみた。僕のロシア語力は全然たいしたものではないけれど、この程度の作業なら何とかできる。工藤訳は実にしっかりしていたように感じた。原文に忠実で、しかも読みやすい。石井訳のほうは、原文とのずれが気になった。原文で強調されている語句が訳文で強調されておらず、その逆もあった。岩波少年文庫なので原文にとことん忠実であることを求めるのは酷だろう。学術論文での引用だから、もっと原文に忠実な翻訳を利用すべきだったかもしれない。石井訳以外をチェックするのを怠ってしまった。今回の反省点だな。校正の際に手直ししなければ。
14時前までは上記の仕事。それ以降は、久々の「乱読ノート」更新。未更新の本がまだだいぶ残っているけど、時間の余裕のある時にぼちぼちと。
腹筋、2セット。
*1:英訳のタイトル表記は『MEMOIRS FROM THE HOUSE OF THE DEAD』だった。