Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

単位不要

3限「英語塾」。DVDで「ピノキオ」を観る。6限「大学院(&番外ゼミ)」。今日の『悲しき熱帯』(第6部第21章から第7部25章まで)はかなり手ごわい内容だったので、結果的に空きコマのすべてを6限の予習に充てることになった。

S井君の報告が素晴らしかった。まだ学部生なのに、大学院レベルの難解なテキスト(しかも130ページという相当な分量)を正確に手際よくまとめたレジュメを用意してくれたばかりでなく(これだけでも十分に賞賛に値するが)、関連する写真資料を図書館から借り出してきて、テキスト読解のためのコンテクストを補足してくれるなど、僕が報告者に期待する任務をほぼ完璧に果たしてくれた。しかも自分の仕事を決して誇示することなく、淡々とマイペースでこなしてくれたのだ。

断言しよう。今日のS井君の報告は、nakcazawaゼミ史上、間違いなく最高レベルであった、と。

実はS井君は(受講者名簿に掲載されているという意味での)正規のゼミ生ではない。彼は現在5回生で、4回生の半ばまで体育会での活動に打ち込んでいて、引退後、一転して勉強に目覚め、「単位が出なくてもかまいません。ゼミに参加させてください」と研究室のドアを叩いてきた。したがって僕と彼との師弟関係はまだ一年と少しだ。しかし、この一年と少しの間、彼の並々ならぬ「やる気」、彼の驚異的な成長には、ただ目を見張るばかりであった。おそらく今日が彼にとって最後のゼミ報告となるだろうが、有終の美を飾ってくれた。指導教員として今日ほど誇らしい日はない。「こんなに素晴らしい学生が関大にはいるのだ」と感動した。

実は僕も、S井君と同じく、4回生になってから「単位が出なくても・・・」とT先生の研究室のドアを叩いた。いわゆる「押しかけゼミ生」だ。留年もした。S井君の姿が十数年前の自分の姿と重なった。最大の相違点は、当時の僕には、今日のS井君のような素晴らしい報告を準備するだけの力量がなく、T先生のご期待に沿えなかった、ということだ。カント『道徳形而上学原論』、デューイ『哲学の改造』等、手も足も出なかったテキストの数々はいまだに忘れることができない。

S井君、君と出会えて本当に良かった。ゼミで学んだことが社会人としての君の飛躍の礎となってくれることを心から願っている。