Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

LOUDNESS (1)

久々に桜湯に行ったことはさておき、満を持して。

ここ一、二か月、ほとんど毎日、研究室でも自宅でも通勤途上でもLOUDNESSばかり聴いている。聴いて、聴いて、聴きまくっている。

彼らが『撃剣霊化〜DISILLUSION』で日本メタル・シーンの頂点に立った1984年(デビューは1981年)、僕は高校1年。ドラムを我流で練習し始めたばかりだった。

当時の僕のお気に入りは、邦楽では中学時代以来のYMOオフコース、チューリップで、洋楽ではYES、KING CRIMSONGENESIS、UK、RUSHといったいわゆる「プログレッシブ・ロック」(例外的にVAN HALENとRAINBOW)だった。基本的にはポップなのだけれど絶妙なコーラスワークや高度な演奏力で凡庸なポップソングとは一線を画している、そんな知性を感じさせるサウンドが好きだったようだ。「ヘビー・メタル」(いわゆる「ヘビメタ」)に対しては、汗臭くて野蛮で乱暴というイメージが付随して、どうしても馴染めなかった。今となっては食わず嫌いだった気もするけれども。

80年代は「ヘビメタ」の全盛期。男子校だったので、ヘビメタ・ファンはかなりの数にのぼっていた。ブレイク前のMETALLICAに目をつけているアンテナの感度の高い同級生もいた。高校の文化祭の花形はヘビメタのコピーバンドで、慢性的なドラマー不足のために、超初心者の僕にすら声がかかる始末。自分の好きなジャンルでバンドを組むことなど不可能だから、渋々ながらヘビメタ・バンドに準メンバーとして加入して、体育館ステージでMSG、JUDAS PRIESTBLACK SABBATHOZZY OSBOURNE、そしてLOUDNESSのナンバーなどを叩いた。*1

あれから二十余年が過ぎた。

LOUDNESSが2000年に(13年ぶりに)オリジナル・メンバーで活動を再開したことは、何となく知っていたが、その時はさほど気に留めずにいた。しかし、ここ一年ほど、オフコースやチューリップを十数年ぶりに聞き返して再評価するうちに、彼らの存在が気になりだした。やはり若い頃に聞き込んだ音楽は身体に染み込んでいるようだ。40代になった今の彼らの音を聴いてみたいと思った。

まずはCDで。もっと早く聴けばよかった、と大後悔した。僕が長年求めていた音がまさにそこにあった。プログレ的な絡み合うテンションの高さは驚愕モノだ。ドラムとベースが作り出すグルーブ感が圧倒的。往年の名曲のリメイクにそれは顕著だ。再録ヴァージョンのほうが格段によい。樋口宗孝のドラムは昔から好きだったのだが、山下昌良のベースがこんなに凄かったとは…。彼はGeddy Leeの大ファンらしいが、これほどまでだった。LOUDNESSの音楽から離れていた十数年の間に僕は熱狂的なRUSHのファンとなったので、今では山下がGeddyから受けた影響の大きさが手にとるようにわかる。Geddyのベース・プレイからこれほどまでに多くを消化・吸収した日本人ベーシストはおそらくいない。そう思って昔の楽曲を聴き直すと、初期のラッシュの影響をモロに受けた楽曲があまりに多いことに気づいて、今さらながらに驚いた。

山下のベース以上に素晴らしいのが、二井原実のヴォーカルだ。かつては「俺はこれだけ高い声が出るんだぜ」的なやや一本調子めいたところがあった。今の彼はそんな表面的なところで勝負していない。かつての高音は出せないのかもしれないが、そんなものは不要だ。それを補って余りある表現力・説得力を獲得している。「つきさす」ようなヴォーカルから「地響き」「津波」のようなヴォーカルへと進化した。歌心も格段に増した。Ronnie James DioDavid Coverdale、Ozzyの良質な部分を受け継いでいる。そう思って昔のナンバーを聴くと、代表曲「Speed」がRAINBOWの「Kill The King」と重なって聞こえてくるから不思議だ。

昔は好きになれなかった高崎晃のギターだが、20年以上にわたってバンドの屋台骨を支えてきた貫禄ゆえなのか、今になって聴くと、その凄まじい速弾きに求道者の魂すら感じてしまう。研鑚を続けてきた4人のベテランが紡ぎだす重厚な音の壁は唯一無二。彼らのような世界に通用するバンドを持てたことを、我々日本人は誇りに思ってよい。DREAM THAETERにも喧嘩を売れるぞ。それくらいにすごい。

CDではとても満足できず、LIVE DVDにも手を出した。1曲目からアンコール最終曲まで演奏のテンションは、微塵とも緩みはしない。メンバーの一人一人がこの四人でLOUDNESSを名乗って再び演奏できることの喜びを噛み締めているのがわかる。特に二井原のフロント・マンとしての魅力はすごい。ファンへの愛情が全身から溢れ出ている。「有名」とプリントされたシャツには笑わせてもらったし、オフステージのショットを見ると、ただのおもろいおっさんだ。まったく神々しさがない。お笑いと紙一重の親しみやすいキャラだからこそ、その渾身のスクリーミング・シャウトが聞き手の心を揺さぶるのだ。OZZY的あるいはSAMMY HAGAR的な格好よさと言っていいかな。とにかく格好よすぎる。

齢を重ねることがこんなに素晴らしいとは。こんな「おっさん」になりたいぜ。今の二井原のような格好よさに僕は憧れるのだ。次のライブ、絶対に行ってやる!*2

満を持してようやくLOUDNESSのことを書いたのだが、全然納得のゆく文章ではない。これでは彼らの魅力をほとんど表現できていない気がするので、機会を見つけて少しずつ書き足してゆきます。はまぞうの調子が悪いようなので、CDとDVDの表示は後日。

最後にいかにも二井原らしい記事を一つ紹介。もうたまらんわ。ほんまに偉大や。

http://www.kochinews.co.jp/yosakoi/050812yosakoi04.htm

西山グループ地方車で“ハイトーンでヘビー”なボーカルを披露するのは、80年代の日本のヘビーメタル界をリードしたバンド「ラウドネス」の初代ボーカル二井原実さん(45)。躍動感あふれる歌に、踊り子たちもノリノリ。
現在、別のバンドで活躍する二井原さんは縁あって初参加。炎天下、サングラスにタオルを頭に巻いて熱唱する姿は迫力満点。ラウドネスを知らない若い踊り子も、「すごくかっこいい!」。
同チームの曲も二井原さんが作詞し、秋にリリースされる自身のバンドのアルバムに収録される予定。よさこいの夏をヘビメタで熱くさせた二井原さんは、「ダンサーの前で歌うのは初めて。子どもからお年寄りまで熱狂するパワーには圧倒される」と満足げだった。

 

*1:自分が正式メンバーだったバンドでは、BEATLES、ROLLING STONES、BRYAN ADAMSなどを演っていた。

*2:お願いだから講義や校務と重ならないで…。