Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

フィル・コリンズ引退

これを観て静養していた。

When in Rome [DVD] [Import]

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昨年行われた再結成ツアーの最終日、ローマ公演をまるごと収録したもの。多くの曲でキーが下げられていて、その点に少し違和感を覚える(それに加えてマイクのギターのカッティングの切れ味もやや鈍っている気がする)けれども、そんなことが気にならないほどの素晴らしいできだ。フィルのヴォーカルはやっぱり無茶苦茶にうまい。年齢とともにいちばん魅力的に響く声域は変わるわけだから、そのためにキーを変えるのはありだと思う。楽曲の魅力は減じていない。トニーのキーボードの音色も重厚で美しい。演奏のほうはいつものように完全無欠である。ライブ・バンドとしてのジェネシスの真骨頂が堪能できるはずだ。

エクストラとしてツアー・ドキュメンタリーが含まれているのだが、これがとても興味深い内容だ。ジェネシスというバンドの核はあくまでマイクとトニーであって、フィルは一歩引いた位置にいることがよくわかる。ジェネシスの楽曲の歌詞の難解さをぼやいているフィルの姿、そして、子どもと過ごす時間を減らしたくないから長期のツアーには出たくないと言っているフィルの姿が印象的だった。

このツアー終了後、フィルは第一線からの引退を表明している。おそらく私生活の度重なるトラブル(働きすぎが原因?)が背景にあるのだろうが、フィルは数年前からワーク・ライフ・バランスを重視する意思を表明していた。そんなフィルがこの再結成ツアーをあえて承諾したのは、自分をスターへと育ててくれた故郷(ジェネシスというバンド、あるいは、マイクとトニー)に最後の恩返しをしたかったからではないだろうか。57歳での早すぎる引退はたしかに惜しまれるが、歌手としても、演奏家としても、メロディ・メイカーとしても、バンドのフロントマン(パフォーマー)としても彼は縦横無尽の活躍をしてきた。そんな彼がいちばん欲しいものは、これまでどんなに望んでも手に入らなかった平穏な生活なのだろう。そのためにはスターをやめる以外に方法がなかったのだと思う。