Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

経済学史学会関東部会

早大で開催された経済学史学会関東部会にて発表する。

経済学史学会ではこれまで全国大会で3回、関西部会で3回の発表経験があるが、関西部会以外の地方部会で発表するのは今回が初めて。ただでさえアウェーなのに、サントリー学芸賞を受賞したD目『アダム・スミス』の合評会の発題を超大御所SONY先生と一緒に務めるとあっては、緊張の大きさゆえに失禁寸前であった(おおげさ)。

経済と倫理―福祉国家の哲学 (公共哲学叢書)

経済と倫理―福祉国家の哲学 (公共哲学叢書)

緊張感をほぐそうとして、発表冒頭で「新日のリングにのぼった全日レスラーの気分です。同じプロレスでも、どこでチョップを入れたらよいのか、勝手がわかりません。変なタイミングで入れてしまったら申し訳ありません」などと自己紹介してしまい、大いにスベる。

僕自身が大きなインパクトを受けたT本『『国富論』を読む』と比較しつつ、D目『スミス』の特徴を好意的に紹介し、その現代的意義を著者の意図を超えて(僕自身の保守主義論や景観論との関連づけながら)論じた。

書評はよく頼まれるし、自分としても好きな仕事なのだが、その際にできるだけ書き手の意図と方法論を尊重するよう心がけている。「・・・が書かれて(扱われて)ない」というコメントに僕は生産的な何かを感じない。何かを書こうとすれば、別の何かを断念しなければならないものだ。今回のD目『アダム・スミス』についても、啓蒙書(新書)なのだから、書かれていないことのほうが多いのは当たり前である。スミス思想に関する啓蒙書の出版はこれまでも少なくないが、『道徳感情論』と『国富論』とを同じ比重で論じたものは存在しない。この事実を積極的に評価するべきだろう。本書は従来のスミス研究史に何を付け加えたのか? どのような新しい論点を提起したのか? そこに焦点を絞って論じるべきだと思う。

20分の報告時間を遵守したので、言い足りない部分もあったが、それは仕方がない。さすがに失禁はしなかった(あたりまえ)。

『国富論』を読む―ヴィジョンと現実

『国富論』を読む―ヴィジョンと現実

仕事が山積みのため、仕方なく日帰りとする。最終の新幹線に乗るため、20時45分に懇親会会場を後にする。もう少し皆さんと語り合いたかった。