Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

2021年を振り返る

明日から1月5日まで年末年始の休暇に入る。今日が2021年最後の日記となるので、例によって、この1年間を振り返ってみたい。

研究者としてはかつてなくproductiveであった。アウトプットは過去最大を記録した。海外査読誌に投稿した英語論文3本が続けざまにacceptされた。特にCahiers d'Economie Politique / Papers in Political Economy誌に掲載されることになったマルサス論は、もともと2012年9月の国際学会(3rd Joint Conference ESHET-JSHET, University of Corsica, Corte, France)で口頭発表したもので、acceptまで9年もの時間を要した。永遠に続きそうな改訂作業に何度も心が折れかけたが、諦めなくて本当に良かった。最後は、このテーマについてはレフェリーよりも自分のほうが専門家であるという自負から、レフェリーに反論を試みて査読を突破した。9年もの時間を費やすだけの価値があったか、もっと賢いやり方があったのではないか、という反省もあるが、長丁場を走り切ったことは自信につながった。

英語論文の改訂作業と同時進行で、日本語論文の新作も3本書いた。1本は恩師TNK先生退職記念号のためのもの(入稿済み)、1本は同僚UEMR先生の退職記念号のためのもの(入稿済み)、1本はマルサス学会シンポジウムのためのものである(年明けに入稿予定)。TNK先生退職記念号には初期バークの美学論文『崇高と美』の社会思想的側面について書いたが、これは修士論文でやり残していた仕事を四半世紀以上かけてようやく完結させたものである。自分の修士論文(1995年1月提出)のテーマは初期バークの社会思想だったが、当時の自分の学力不足のため、『崇高と美』にまったく歯が立たず、考察対象から除外して『自然社会の擁護』と『カトリック教徒刑罰法論』にフォーカスを絞って修論を仕上げた。そのため四半世紀以上、自分の初期バーク研究は「画龍点睛を欠く」状況が続いていたが、これでようやく大きな宿題を片付けられた気がしている。

これら以外には、書評(『人口問題の正義論』)が1本活字になり、学会報告4本(うち1本は学会シンポジウムの組織者を兼任)、研究会報告2本、学会報告の討論者1件、学会セッションの司会者1件を務めた。

ただ、これだけの研究活動を進めながら、過去最大級と言える授業・校務・学会仕事の負担――特に、まだ終わっていないが、教員組合副委員長の仕事が予想以上に忙しかった(研究推進部副部長の時のほうがまだ時間があった気がする)――を背負うと、必然的に休日を仕事日にしなければこなしきれず、本当にしんどかった。体調は1年を通してずっと低空飛行で(おそらく更年期と重なっていたように思う)、特に3-5月と11-12月の疲労感は深刻で、ぶっ倒れなかったのが不思議なくらいである。妻子は1年間を通してすこぶる健康であった。 

コロナまみれの1年間であった。2校(福井県立大・東大)の集中講義が去年と同様にオンラインとなり、がっかりであった。(息子が通う幼稚園の学芸会もコロナ対応の一環で平日開催となり、観に行けずじまいだった。)ただ、コロナで不自由な中、ゼミ生は3学年(19-21期)ともしっかり活動してくれたように思う。特に19期生の卒論のいくつかはたいへん個性的かつ興味深い内容で、指導のやりがいがあった。また、元ボス橋本昭一先生の叙勲、1期生FCGMさんの内閣官房長官賞受賞、指導院生O君の就職決定もたいへんうれしいニュースであった。

この1年間で最も力を注いだのは(1月18日に再開した)ロシア語の勉強である。ただでさえ忙しすぎる1年間だったので、読書を禁欲し、これまで読書に費やしていた時間の大半をロシア語の勉強に回した。(そのため、読書量が激減した。ここ二十数年で最低ではなかったか。)これまで音楽を聴いていた時間の大半をロシア語の勉強(音声教材)に回した。そのようにして超多忙な毎日が続いてもかろうじて勉強を持続できた。まだ語彙力が低く、辞書なしでスラスラと読めるわけではないが、もし気が向いた時だけに中途半端に勉強するような感じであったら、今の半分も読めなかったであろう。

教員組合副委員長の職務はまだ3か月ほど続くが、それさえ終わってくれれば、かつての読書時間を確保できるように思う(そう信じたい)。読書は研究者の栄養源なので、来年は今年の分も読みまくりたいものだ。もちろん、ロシア語の勉強は来年も続けるつもりであるし、ドイツ語の勉強とうまく両立させたい。そして、「マルサス批判の国際的展開(その受容と変容)」という長期的な研究テーマを遂行するためのしっかりとした足場を築きたい。

今年も平凡な一大学教員の日記(雑文)を読んでいただき、どうもありがとうございました。1日平均150ほどのアクセスがあるのが不思議でなりませんが、来年も無理のない範囲で続けたいと思っていますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

【8018】