Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

2017年を振り返る

2017年もそろそろ終わりということで、この1年を振り返ってみたい。率直に言って、これまで生きてきた49年間で、公私ともに最も充実した1年だったように思う。

まず、プライベートでは、3月に第二子(長男)を授かった。妻の年齢を考えると(実際、切迫早産の危機に一度ならず直面した)、無事に生まれてきてくれたことだけでも、一生分の運を使ってしまったようで、小さな奇跡を感じずにはいられない。加えて、長男誕生に後押しされて、出町柳(吉田)に土地を買って家を建てることをついに決心するにいたった。家がまだ完成していないので、引っ越しは来年3月になるが、ローンの返済はすでに始まっている。30年前に京都へ移り住んできてから愛してやまない鴨川河畔に(よほどのことがないかぎり)これからもずっと(おそらく死ぬまで)住む続けることになる。しかもそこが自分の子どもたちにとって故郷にもなるわけで、こんなに嬉しいことはない。

以上の二つだけをとりあげても、2017年は満点の1年だと言えるのだが、仕事(研究)のほうでも大きな成果に恵まれた。全学の役職(研究推進部副部長)をこなしながらの研究だったので、慢性的な時間不足に苦しんだが、そのことがかえって仕事の生産性を向上させてくれたみたいで、おそらく質量ともに過去最高と言ってよいアウトプットを記録した。以下に記すのが今年の研究業績である。

  • 〈著書〉

『バーク読本―〈保守主義の父〉再考のために』(共編著)昭和堂, 8月刊。

  • 〈分担執筆〉

「〈保守主義の父〉再考のために―まえがきに代えて」中澤信彦・桑島秀樹編著『バーク読本―〈保守主義の父〉再考のために』序章, 昭和堂, 1-18ページ, 8月刊。

  • 〈論文〉

「18世紀中葉〜19世紀初頭のイングランド社会の結婚パターンとその思想史的意義―ハードウィック結婚法をめぐるバークとマルサスの見解を手がかりにして」『経済論叢』第191巻第1号, 京都大学経済学会, 1-18ページ, 3月刊。
"What Attracted Keynes to Malthus's High Price of Provisions?," Erasmus Journal for Philosophy and Economics, Vol.10, No. 2, pp.24-44, 12月刊。

  • 〈研究ノート〉

「「バークとマルサス」研究と小林昇経済学史研究」『マルサス学会年報』第26号, マルサス学会, 95-117ページ, 3月刊。
「『バーク読本』(昭和堂、2017年8月)の編集から見えてきたこと」『関西大学経済論集』第67巻第3号, 関西大学経済学会, 161-172ページ, 12月刊。

  • 〈学会・研究会〉

「政府の「なすべきこと」と「なすべからざること」―ケインズはムーアとバークから何を学んだのか?」経済学史学会大会, 徳島文理大学, 6月3日。
マルサスとミルトン」社会思想史研究会, 同志社大学, 7月1日。
マルサス人口論』とミルトン『失楽園』」経済思想研究会, 東北学院大学, 8月6日。
「『バーク読本』(昭和堂、2017年7月)の編集から見えてきたこと―経済学方法論史との関連で」経済学方法論フォーラム, 小樽商科大学, 8月30日。
「中澤・桑島編『バーク読本』合評会:評者へのリプライ」保守的自由主義研究会, 大阪市立大学文化交流センター, 10月7日。
"What Attracted Keynes to Malthus's High Price of Provisions?," 経済学方法論フォーラム, 於中央大学駿河台記念館, 12月26日。

今年の前半は『バーク読本』に、後半はErasmus Journal論文に研究時間の大半を傾注した(ただし夏休みは2本目の研究ノートと来年初頭に公刊予定の書評の執筆に費やしたけれども)。

バーク読本: 〈保守主義の父〉再考のために

バーク読本: 〈保守主義の父〉再考のために

https://www.ejpe.org/journal/issue/view/19

国際学会への参加を自粛し、自由な読書を我慢するという犠牲を払ったけれども、科研費共同研究の成果を出版物にまとめることができたし、5年ぶりに海外ジャーナルに英語論文を載せることもできた。後者は事実上シドニー在外研究の成果だけに、無事に公刊できたことでお世話になったシドニーの友人研究者たちに最高の返礼ができた気がする。実際、論文掲載を友人たちに伝えると、お祝いの返信が続々届いた。本当に僕は人間関係に恵まれていると改めて感じた。論文の謝辞には、スペースの都合で日本人1名、オーストラリア人4名の名前を記したが、この5名以外にも僕の研究を絶えず刺激してくれている年長の畏友K保さん、年少の畏友I上さんの名前を記したかったし、恩師T中先生、S藤先生、HR先生、D先生の名前も記したかった。さらに言えば、バーク研究会、経済学方法論フォーラム、HETSA、UK HETのメンバー全員の名前を記したかったくらいだ。

学内行政と教育と育児に追われた1年だったが、何とか時間をやりくりして、バンド活動(ドラム)だけは何とか継続できた(水泳は無理だった・・・)。聴く側としての収穫は、ここ数年で最高の収穫と言ってもよいものだが、UKのNight After Night(Live in Japan, 1979)の完全版であろう。今年ダントツでトップの再生回数であり、「30年以上待ったかいがあった」と思わせる素晴らしい演奏だった。このライブ盤におけるTerry Bozzioのドラミングは、RushのNeil Peartと並んで、僕のドラマー人生における永遠のヒーローであり、そのドラミングの神髄に改めて触れられたことは、本当に大げさな表現ではなく、全身が打ち震える素晴らしい体験だった。*1

Ultimate Collector's Edition

Ultimate Collector's Edition

2017年はまだまだある。小学校からの幼馴染であるY君の就職(テニュア職)。大学の同期のM君の著書『わけあり記者』のヒット。学生時代に所属していた劇団の卒業後初めての同窓会。昨日のブログにも書いた、大学の同期S君との25年ぶりの再会。等々。本当に嬉しい出来事、イベントが目白押しだった。

労働密度が高すぎたためか、1年間ずっと体調は低空飛行気味だったが、1月の軽い気胸と2月のインフルエンザを除けば、大病は患わず、何とか持ちこたえられたし、それは妻と二人の子どもたちも同様だったその点でも本当に良い1年だった。

ただ、加齢もあって、疲労が抜けにくい体になってきていることは確か。生まれてばかりの息子のことを考えると、これからまだ20年以上、元気に働き続けなければならない。そう思うと、来年の最大の課題は、仕事をいかに上手にセーブするか、ということになる。僕の本業は研究者であるし、研究をセーブすることはできるだけ避けたいが、給与は教育・校務から出ているので、こちらをセーブすることも難しい。5歳の娘と0歳の息子の育児をセーブすることも、なかなか難しい。本当に悩ましい。来年2018年は、今年以上に、公私両方の優先順位をしっかりと見定めなければならない1年になりそうだ。

今年も駄文におつきあいくださり、どうもありがとうございました。日記をブログ形式で書こうと思い立ったのは2005年(8月)のことでしたので、早いもので12年もの時間が経過しました。12年前は子どももおらず、英語での仕事も開始しておらず、まさか現在のような12年後を送っているとはまったく想像だにできませんでした。

今年の更新は今日が最後になります。来年も(時々手抜きがあるかもしれませんが)基本的に毎日更新を続けたいと考えています。ご笑覧いただけますと幸いです。それでは皆さん、どうか良いお年をお迎えください。

*1:他方で、そのUKでベース&ヴォーカルを務めたJohn Wettonが今年初頭に突然この世を去ったことは、今年の最も悲しいニュースの一つである。