Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

今日のBGM

80年代ロックの最高傑作との評価も高い1982年に発表されたラスト・アルバム。ロキシーというバンドに格別な思い入れのない僕も、このアルバムだけは別格扱い。とても23年前の録音とは思えない透明感あふれるサウンドは完全に時代を超越している。実際に行ったことはないけれど、南太平洋の人気のないビーチで、やわらかな日差しを浴びながら、寄せては返す波の音を聞いているような安らかな気分になる。特に8曲目‘To Turn You On’は何度聞いてもいつも胸の中に静かだが熱い何かが残る。

ロキシーはもともと演奏テクニックを誇るようなバンドではなく、むしろ多少モタモタ感の残るサウンドが個性の一部でもあった。しかし、本作にはそのモタモタ感はみじんも見られない。スティーリー・ダンのようにすべての音が美意識の下に統率されている。耽美派ロックの極みだ。この時、バンドとしての実体はすでになきに等しく、事実上ブライアン・フェリーのソロ・プロジェクトと化していた。他のメンバー(マッケイ、マンザネラ)はスタジオ・ミュージシャン的な関わりしか持たなかったと聞く。バンドとしてのロキシーを愛した昔ながらのファンの心境は複雑だったろうが、だからこそバンドとしてのロキシーにもブライアン・フェリーにも思い入れのない僕の心を虜にするような音ができあがったとも言える。ピンク・フロイドが『ファイナル・カット』の録音時にまったく同じような状態にあったのは何とも奇遇だ。たしかそのアルバムも録音の良さで評判だったな。ともあれ、本当に素晴らしいアルバムだ。

アヴァロン(紙ジャケット仕様)

アヴァロン(紙ジャケット仕様)