超久しぶりになるが、アルバムをレヴューしたいと思う。バンドの中心人物であるドラマーのMike Portnoyが脱退し、Mike Manginiが加入した新生Dream Theaterの新作である。
ア・ドラマティック・ターン・オヴ・イヴェンツ(スペシャル・エディション)(初回限定盤)
- アーティスト: ドリーム・シアター
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2011/09/07
- メディア: CD
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結論から記そう。メンバー・チェンジは吉と出た。ここ数年間では最高の出来ばえだと思う。DTのアルバムは60分を超える長尺のものが多く、聴き通すのにはかなりの集中力を要する。かなり出来が良くないと聴き通せない。この新作は80分近い大作だが、一気に聴き通すことができた。1999年に発表された『メトロポリス・パート2 : シーンズ・フロム・ア・メモリー』以来のことだ。それくらい良い出来だった。
本作はセカンド・アルバムの『イメージズ・アンド・ワーズ』を強く意識した作風になっている。1曲目のOn The Backs Of AngelsはPull Me Under、3曲目のLost Not ForgottenはUnder A Glass Moon、8曲目のBreaking All IllusionsはLearning To Liveを彷彿とさせる。7曲目がバラードなのも、Images And Wordsと同じ。8曲目でMyungが久々に歌詞を書いているが、Learning To Liveの作詞もMyungである。指令塔を失ったからこそ、残されたメンバーは原点回帰を意図したのではないか? ドリーム・シアターらしさを再確認するために。
Portnoy在籍時代のDTは、彼が指令塔だったためか、時としてドラムが必要以上に大きくフィーチャーされ(それに連れられてか、ギターも重低音を多用し)、ヴォーカルやベースの邪魔をしていた。今回、ドラマーがManginiに交替して、各パートのミキシング・バランスが適正化された気がする。ヴォーカルとベースがとてもクリアに聞こえる。音の抜けが良い。聴いていて気持ちが良い。また、ヴォーカルのLabrieのラブリエの声域を意識した曲作りが行われたのも、久々にMyungが曲作りに積極的に関与するようになったのも、Portnoy不在のおかげだろう。ManginiのドラムはPortnoyと比べれば確かに地味(超絶テク控え目)なのだが、そのことがバンド全体にもたらしたプラスの要素を積極的に評価したい。キーボードのRudessもこれまで以上に頑張っている。5曲目のオルガンソロは文句なしにカッコ良い。
本作は『イメージズ・アンド・ワーズ』ほどキャッチーではない。キラー・チューンも。しかし、優れたバンドアンサンブル、親しみやすい曲調、抜群の録音処理などによって、ここ数年では最も充実したアルバムとして評価されるはずだ。Breaking All Illusionsは新たな代表曲として認知されるだろう。