Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

今日のBGM

僕がイギリス留学中(2002.4-2003.3)に大いに印象づけられたことの一つとして、本国におけるクイーン人気の(僕の想像をはるかにこえる)すさまじさが挙げられる。まさしく国民的バンドだ。ラジオ、カフェ、銀行の待合室、至るところでクイーン・ナンバーがひっきりなしに聞こえてくる。「ボヘミアン・ラプソディ」は英国の第二の国歌と言っても過言ではない。そんな雰囲気に乗せられて、クイーンのCDやライブ・ビデオを買い求めるうちに、帰国する頃にはすっかり彼らの虜になってしまっていた。

楽曲それ自体の魅力は言うまでもない。メンバー4人全員が一流のソング・ライターだ。思わず一緒に歌ってしまうようなキャッチ−なメロディを持った楽曲が多い。重厚なコーラスで彩られたバラエティに富む楽曲群は決して聞き手を飽きさせない。しかしそれ以上に彼らを他のバンドと比べて突出した存在にしているのが、その圧倒的なライブ・パファーマンスだ。(結果的に最後のツアーとなってしまった)1985年のウェンブリー・スタジアムでのライブを収めたDVDを見てもらえれば一目瞭然だろう。気迫に満ちた演奏もさることながら、7万5千もの観客の目を釘づけにしてしまうヴォーカルのフレディ・マーキュリーのパフォーマンスは神がかり的だ。格好よさの極致なのだ。1991年、フレディの悲劇的な死によって、バンドは二十余年の歴史にいったん終止符を打つ。それから14年、最後のツアーから数えれば19年たった今年2005年、クイーンは御大ポール・ロジャースを新たなヴォーカルに迎え、ファンの前に再び姿を現わした。

新生クイーンの演奏は素晴らしい。ブライアン・メイのギターはこれまでのどのアルバムよりもテンションの高い音を放っている。うなっている。ミキシングもでかい。今回の再結成をいちばん喜んでいるのはブライアンだという気がする。ロジャー・テイラーのドラムも年齢を感じさせない激しさだ。ポールも、クイーンの歴史を尊重しながら、往年の名曲に新たな息吹を吹き込んでいる。特に‘Another One Bites the Dust’や‘I Want to Break Free’といったジョン・ディーコン作のナンバーは完全に自分のものにしている。ファンの反応も良好で、新生クイーンを好意的に受け止めているようだ。(大合唱がそれを物語っている。そのぶんポールのナンバーに対する反応はかなり鈍いが。)

しかし、これをクイーンとして認めたくない自分がいる。ブライアンとロジャーは、フレディとファンを愛するがゆえに、クイーンを復活させた。他方ジョン(不参加)は、フレディとファンを愛するがゆえに、伝説を伝説のまま封印しようとしたのではないだろうか。僕にはジョンの気持ちがわかる気がする。

ロジャー・ウォータース抜きのピンク・フロイドを僕は抵抗なく受け入れることができた。それは僕がフロイドの「音」に魅了されていたからだ。極端な話、フロイドの「音」であるなら、演奏者がフロイドのメンバーでなくてもかまわないとまで思う。しかし、クイーンに対して、僕は同じような気持ちになれない。フレディという「人間(≒芸人)」にあまりにも魅了されていたからだ。僕のようなファン心理を十分に察した上での活動再開なのだろう。だからバンド名は「クイーン」ではなく「クイーン+ポール・ロジャース」となっているのではないか。

もっとも、ポールのライブ・パフォーマンスを見ずして結論を出すのは早計だろう。ライブが見たい。

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