Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

経済学特殊講義6

履修登録の時期なので、秋学期に担当する「経済学特殊講義6」のシラバスをここに再掲*1しておく。学生諸君(特に卒業単位を満たすのがギリギリの4回生)はシラバス(特に「成績評価の方法」)を精読の上で登録するように。テキストは専門的研究書なので、けっこうな値段になるはず。少なくとも安価ではないはず。現時点では未刊行なので正確な情報は提供できないが。なお今年度の僕は国内研修との兼ね合いで「経済学説史」を担当しない。

経済学特殊講義6(近世イギリス財政革命) 秋学期2単位

講義概要 名誉革命(1688)以後のイギリス(イングランド)政府は、植民地帝国の建設、対仏戦争の遂行のために多額の戦費を必要としていた。公債制度の導入 (1693)、公債引受機関としてのイングランド銀行の設立(1694)は、国家財政に革命的な構造転換をもたらしたが(いわゆる「財政革命」)、他方で常備軍と官僚制の拡充、金融階級(公債保有者)の台頭を招いた。こうした事態は同時代人に重大な思想問題を突きつけた。それは「公債の累積は自由な国制 (均衡国制)を破壊するのではないか?」「土地財産を経済的基盤としていない金融階級は有徳な市民たりうるのか?」といった「文明社会の危機」「富と徳のアンチノミー」をめぐる問題である。18世紀イギリスの啓蒙思想家たちは、こうした問題を正面から受け止め、危機を乗り越える理論装置を構築しようと奮闘した。アダム・スミスの『国富論』はこうした知的奮闘の一産物なのである。本講義では、経済学の成立過程を強く意識しながら、近世イギリスの政治・経済システムを「財政革命」を中心に詳説する。

講義計画 通常の講義である。講義は教科書に沿って行なわれる。教科書の目次は以下の通り。
イントロダクション
1 トーリと秩序のイデオロギー
2 ウィッグと同意による統治
3 コートとカントリ
4 ウィッグ支配体制の擁護
5 カントリ・イデオロギー
6 急進的イデオロギーの発展
7 1790年代の急進的イデオロギー
8 国制の保守的擁護

成績評価の方法 出席40点、期末試験60点、計100点。毎回出席をとりコメントを求める。出席1回につき4点加点(最高で40点)。期末試験は論述形式である。

教科書 H.T.ディキンスン 『自由と所有』 (ナカニシヤ出版) 近刊

参考書 田中秀夫 『原点探訪 アダム・スミスの足跡』 (法律文化社)

備考 本講義は講義担当者のイギリス留学(2002年3月〜2003年3月)の成果を披露するものである。「上級・経済学説史」と呼びうるハイレベルな講義になるだろう。したがって受講者にそれなりの覚悟を求める。毎授業の入念な予習・復習を欠いては講義の理解(単位修得)は困難である。毎回出席をとるのもこのような理由からである。