Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

John Pullenさんとの面会(シドニー46日目)

今日の昼食


今日は待ちに待ったJohn Pullenさんとの面会である。

https://www.une.edu.au/staff-profiles/business/jpullen

Pullenさんと書いたが、本当はPullen先生と書くべきお方である。その学恩はエジンバラのHarry Dickinson先生に次ぐ大きさであると言ってよい。バーク研究者として出発した僕がマルサス研究に足を踏み入れるにあたり、むさぼるように読んだ(今も読み続けている)二冊の本がある。ドナルド・ウィンチ『マルサス』とジョン・プレン『マルサスを語る (Minerva21世紀ライブラリー)』だ。この二冊との出会いがなければ、マルサス研究者としての今の僕は存在しない。そう言い切れるくらい、この二冊から巨大な影響を受けた。John Pullenという名前は、僕がマルサス研究に足を踏み入れたごく初期から、僕の脳裏に刻まれている。マルサス『経済学原理』の各版対照の編者もPullenさんだ。

T. R. Malthus: Principles of Political Economy: Volume 1

T. R. Malthus: Principles of Political Economy: Volume 1

T. R. Malthus: Principles of Political Economy: Volume 2

T. R. Malthus: Principles of Political Economy: Volume 2

僕が研究報告を行った初めての国際学会は2008年のHETSAなのだが、「Pullenさんはオーストラリアの方だからきっとHETSAには参加されるはず。たとえ報告が失敗に終わったとしても、せめてPullenさんの知遇だけは得て帰りたい。今後の自分の研究活動の礎にしたい」と強く念じたことは、いまでもはっきりと覚えている。そして、この年のHETSAへの参加がきっかけで、Pullenさんとの交流が始まった。僕のHETSAへの愛着はこの時に始まっている。とにかく、学会の雰囲気がフレンドリーで、知り合いを作りやすいのだ。MatthewやRodさんの知遇も2008年に得た。Alex Millmow会長やTony Endresさんとは去年オークランドで親しくなった。この学会にはフレンドリーな方々が本当に多い。

http://www.abc.net.au/local/stories/2008/10/17/2393956.htm

http://www.business.auckland.ac.nz/people/aend003

Pullenさんの研究スタイルはWinchさんと対照的だ。博覧強記で、壮大な見取り図をessayスタイルで雄弁に流れるように描き出すWinchさんと違って、Pullen先生は地道な文献実証派で、個別のトピックを個々の学術論文で丁寧に論証していく。personally very kindだが、academically very strictなお方だ。僕がマルサス論をHistory of Economics Reviewに掲載できた(査読をパスできた)のも、投稿前にPullenさんに草稿を見てもらい、改訂のための膨大なコメントを頂戴し、その改訂作業を経た改訂稿を投稿したことが大きい(2008年7月に報告したのに、投稿は2011年8月で、3年もかかってしまったのは、日本語の単著の準備に加えて、改訂作業の膨大さもあった)。

Pullenさんとは2009年のHETSAでもご一緒できたし、しばらく間が空いたが、昨年3月に南山大社会倫理研究所の国際ワークショップでもご一緒できた。今日は1年3か月ぶりの再会なので、"Long time no see."ではないのだが、その間のメールのやりとりを通じて、John, Nobuと呼び合える関係になれたことが嬉しい。

今日11時、Newtown駅前で待ち合わせ。冒頭からいきなり、「君は何年たっても見た目が変わらないからすぐにわかる」って、ほめ言葉に聞こえない(苦笑)。近くのカフェに入り、1時間半ほど歓談する。大半が雑談だったけど、あっと言う間の1時間半だった。楽しかった。今度ご自宅に招待してもらえることになった。Pullenさんの正確なお年は存じ上げないが、2006年にUniversity of New Englandを定年退職されたとおっしゃっていたから、おそらく70代半ばくらいだろう。初めてお会いした2008年と比べると、外見的にはずいぶんとお年を召されたように思うけれども、お元気で、言葉もはっきりしており、何より頭脳が明晰である。これからもずっとご指導・ご鞭撻をたまわりたい。まだまだ元気でいてください。

僕が今書いている論文に関しては、「ケインズマルサスというテーマは、先行研究が膨大なため、レフェリーの要求水準も高く、要求項目も多くなるから、マルサスの『食糧高価論』に絞ってケインズへの影響を論じるのは、アプローチとして正しいと思う」と好意的な評価をいただけた。よし、ますますやる気が出てきたぞ。

別れ際に、Newtownのお店をいくつか紹介してくださった。「このお店は僕の妻のお気に入りでね。君の奥さんもきっと気に入ると思うよ。7月に来た時にぜひ連れて行ってあげたらいい」と。

雑談とは言え、1時間半、さほど疲れることもなく、一対一で会話を続けられたことは大きい。David Kimさんに頼まれたゲスト・スピーカーも、何とかこなせそうな気がしてきた。もちろん予習は入念にやっておく必要があるけれども。

午後から研究室へ。昼食はもう一つの学食で買ったチキンバーガーだが、それが超美味で、これまで日本で食べたどんなチキンバーガーよりもおいしかった。研究のほうは例によって論文の改訂作業の続きだが、快調に進んだ。