今日は休日の醍醐味を味わい尽くした・・・なんて書き始めると、「いったいどこに行って何を楽しんできたんだ?」と訝しく思われるだろうが、実は昨日と同じで、自宅で読書に耽っていただけである。難聴の影響で読書の難しい半年間を過ごしたため、今は自由に読書できることの喜びが以前にもまして大きい。しかも、今日手に取った2冊はともに企業関係者の筆によるいわゆるビジネス本ながら、類書とは一味も二味も違い、たいへん読みごたえがあった。
1冊目はこれ。
23期生(現3回生)内ビブリオバトルでのチャンプ本(プレゼンターはUEDさん)で、秋学期最初のゼミテキストとしての採用がすでに決定している。ゼミの内容と密接に関連している仮説思考、ヘーゲル弁証法、ブレインストーミングなどの重要性を超平易に解説してくれており、たいへんありがたい。その解説に深みはないが、読書に苦手意識を持つ若者を読者として想定して、意図的にハードルを避けたことが容易に想像できる。彼(女)らのニーズや生活実感に寄り添いつつ、避けられがちな読書や手書きメモの効用をさりげなく説くなど、さすが実務家でありつつ大学の教壇にも長年立っている方だなと感心した。ワンクリックでどんな情報も簡単に手に入ってしまう現在、読書の効用をタイパ・即効性最重視の若者に実感してもらうのは本当に難しい。そんな中、彼らが心を開きやすい文章・文体で書かれており、とてもよく練られた書物だと感じた。
2冊目はこれ。
キングジムは昔から個人的に興味を持っている企業の1つで、一時期は同社の商品ポメラ(デジタルメモ帳)のヘビーユーザーだった。ユニークな商品を次々と生み出すアイデア企業として知られ、同社が「がっちりマンデー!!」で取り上げられた放送回は録画保存し、講義で何回か参考映像として流したこともある。*1そんな同社の裏側を垣間見たくて、(2年以上も積読状態だった)本書を(ようやく)手に取った。何より印象深かったのは、著者の仕事への取り組みの誠実さ・真摯さであり、それを綴っている文章の明晰さと美しさである。まるで絵画のようで、読んでいて心が洗われた。まさしく文は人なり。自分の指導学生にも社会に出た後こんなふうに誠実に・真摯に仕事と向きあって欲しいと強く願う。そして、著者の2冊目の書物を心待ちにしている。
2冊とも、偶然の符合ながら、ネット時代のコミュニケーションのあり方について読み手に再考を促す内容になっている。超オススメである。
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