Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

父の背中

去る1月8日に留学先の台湾で急死された同僚Iさんの「お別れの会」が勤務先の千里山大学で催された。故人は中台経済研究の第一人者だっただけに、内外から多数の参列があり、会場は超満員。文字通りの「盛会」であった。台湾の陳水扁総統、李燈輝前総統からも哀悼の言葉が寄せられた。

Iさんは「エネルギッシュ」「豪快」「働きすぎ」を絵に書いたようなお方であった。僕の父よりも2年短い59年の生涯であったが、公刊された著書はすでに13冊にも達し、研究者としては十分すぎるほど濃密な人生を生きられたように思う。だから僕は今日を晴れやかな気分で迎えたかった。「Iさん、もう十分に頑張ったよ。偉いよ」と故人を褒め称えるつもりで会場に足を踏み入れた。しかし、奥様、3人のご子女のお姿を初めて拝見した瞬間、そんな気持ちはどこかに吹き飛んでしまった。急に目元が潤んできた。やはり悲しい気持ちは偽れない。

僕は男だし、父を失ってからさほど月日がたっていないから、つい息子さんの心中を想像してしまった。息子にとって父の背中というのは(反面教師の場合があるにしても)本当に巨大だ。まだ中学生とのことなので、中台経済研究の第一人者と言われてもピンとこないだろうけれども、自分の父親がいかに偉大で多くの人々に慕われていたのかを、今日、瞳に焼きつけてくれたのではないだろうか。そんな父を誇りに思ってこれからの人生を気丈に歩んでくれるはずだ。僕はそう信じたい。

学部(東鴨川大学)で教えを受けたH先生、大学院(北大和川大学)でお世話になったS木先生も参列されていた。お二方ともIさんの20〜30年来の旧友だと伺っている。悲しみの深さは僕の比ではないだろう。近況報告くらいしたかったのだが、お二人の悲しみの深さを慮ると、さすがに言葉に詰まってしまった。挨拶を交わせただけでよしとしよう。