Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

永久保存レジュメ!?

今日はプラトン『饗宴』読書会(通称「キノ研」)の実質的な第1回。日中はその予習に充てる。ひたすらプラトン関連文献を読み耽りメモをとる。集中力を高めるために今日も仕事場所に研究室ではなく図書館を選ぶ。

自分の専門的研究領域ではないだけに、準備はけっこうしんどいけれども、そのぶん何もかもが新鮮で刺激的だ。二千四百年前に書かれた書物を自分が読んでいることだけでも十分に驚嘆すべき事実だ。聖書よりも古いのだから。

18時。キノ研スタート。7名全員が出席。今日の報告者はニーチェ道徳の系譜』読書会から継続参加の5期生T瀬君。どんなレジュメが出てくるのかと思いきや、これが僕の期待をはるかに上回る素晴らしい代物。プラトン初体験のはずなのに、簡明にして要領を得たテキストの要約は「見事!」の一言に尽きる。登場人物の台詞は現代語(千里山大生語)訳されており、すこぶる読みやすい。しかも理解を助けるマンガつき。アガトン邸見取り図は本当にありがたい。サービス精神満点。東鴨川大生や北大和川大生でもここまで独創的で内容の充実したレジュメはめったに作れまい。これは永久保存して後世に伝える価値のあるレジュメだな。指導教員として、誇らしい気分。そして、単位のつかない自主ゼミにここまでエネルギーを傾注してくれることに感動。僕のやる気も倍増。

議論も充実していた。5期生M口君の指摘をきっかけに、久保勉氏(岩波文庫)の訳文そのものを検討するにまで至った。彼がひっかかったのは46ページ、アポロドロスの台詞。

ところが、君達の方ではまた恐らく僕を不幸な者と思っているのだろう、そうして僕も君達がそう信ずるのは正しいと信じる。ところが僕は、君達については、単にそれを信ずるのではなくて、たしかに知っていたのだ。

太字部分の意味がとりにくい、とのM口君の指摘。確かにそうだな。そこで英訳(ギリシャ語は読めないので)を参照してみる。

And I dare say that you pity me in return, whom you regard as an unhappy creature, and very probably you are right. But I certainly know of you what you only think of me -- there is the difference.

「単にそれを信ずるのではなくて」の部分が誤訳くさいが*1、誤訳であるか否かは別にして、学部ゼミでここまで高度な話題を扱えたことに素直に感動。十分に大学院レベルに達している。

ゼミ生の優秀さを実感できて、今日は大満足の一日だった。来週のキノ研がはやくも楽しみだ。僕もゼミ生に負けないようにしっかりと準備をしよう。

*1:ギリシャ語を読めないので断言できないが、英訳に従えば「信じて(思って)いるにすぎない」となるだろう。