Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

オーストラリア旅日記

nakcazawa@HETSA2013


7月2日(火)から今日8日(月)までオーストラリアのパースに出張していた。パースにあるThe University of Western Australiaで開催されるオーストラリア経済学史学会(The History of Economic Thought Society of Australia=HETSA)第26回大会に参加し、研究報告を行うためである。

http://www.business.uwa.edu.au/research/conferences/hetsa/abstract

英語での研究発表は今回が6回目になる。過去5回のうち海外の学会・シンポジウムで発表した経験は3回だが、そのうちの2回を2008年(シドニー)・2009年(パース)のHETSAで行った。この学会への参加は4年ぶり、3回目である。2009年の大会も今回と同じパースでの開催だったが、その時はパース市郊外のフリーマントルに位置するThe University of Notre Dameで開催されたので、パースのCity Centreまで足をのばす時間的余裕がなかった。そのため、二度目のパースなのだが、目にする風景はほとんどが初めてのものであった。

The University of Western Australiaのキャンパスは本当に広大で、緑がいっぱい。うらやましい。

この建物(University Club)で大会は行われた。

大会は3日から6日までの4日間(3日のみ夕刻からスタート)。日本人研究者の参加は僕、HSMTさん、KNDさん、TMさん、NSMTさんの5名。若手のNSMTさんは今回が国際学会デビューである。

僕の出番は5名のうちでの最初で、4日の午前であった。昨年9月のコルシカで報告した内容と基本的に同じだが、その時の失敗の反省を活かして、聴衆の理解を助けるためのパワーポイントを作成し、操作しながらのプレゼン練習を何度も行った。単なる読み上げにならないよう、気を付けた。前日の3日も宿舎で2回、ストップウォッチで時間を計って練習した。そのかいあって、これまで5回のどのプレゼンよりもミスなく流暢にできたし、聴衆の反応も良好で、質疑応答も活発だった。

2010年3月に来日され、大阪学院大学セミナーを行ったジョン・ヴィントさん*1も、はるばるイギリスから今回の大会に参加されていたが、そのヴィントさんからお褒めの言葉をいただいて、大きな自信になった。3本目の英語論文の公刊に向けて、野心が強まった。

聞き取れなかった二つ目の質問「マルサスはヒューム・・・?」は、「マルサスはヒュームの名前に直接言及しているのか?」という内容だった。シンプルな質問だが、acknowledgeをknowledgeと聞き違えて、ヒューム『人間本性論』の知識論についての質問と聞き違えて、混乱してしまった。悔やまれる。質問者のマイケル・シュナイダーさんと5日のディナーでこのことを改めて話す機会があり、疑問が氷解した。今回の自分のプレゼンはICレコーダーで録音してあるので、後日何度も聞き返して、今後の研究活動に活かしたい。

日本人研究者の報告はいずれも好評で、活発な質疑応答が展開された(パワポを用いなかったTMさんのご報告だけ、内容がフロアに伝わりづらかったのか、やや低調であった)。とりわけNSMTさんは英語での研究報告が初めてとは思えないほど堂々としていた。大したものだと思う。

収穫の多い大会だった。昨年12月に来日され、セミナーにも参加させていただいたシドニー工科大学のロッド・オドンネルさんと、旧交を温めることができた。そればかりでなく、おそらく数年後に取得できるであろう二度目の在外研究(半年)の際に、受け入れ窓口役を引き受けてくださることになった。アパートを借りる際にもアドバイスをいただけることになった。本当にありがたいことである。再度エディンバラ大学にお世話になることも可能だったが、「変化」を選ぶことにした。*2オドンネルさんはケインズ経済学、とりわけその哲学的基礎の研究で著名だが、僕が現在研究を進めているケインズのバーク受容・マルサス受容についても造詣が深く、このテーマで論文も発表されており、指導を仰ぐにはぴったりの方である。

http://cfsites1.uts.edu.au/business/staff/details.cfm?StaffId=7530

また、シドニーでの在外研究は、The University of SydneyのTony Aspromougosさん、Matthew Smithさん、Mike Beggsさんとの研究上の交流も期待できる(Mikeと親しくなれたことも今回の渡豪の収穫)。シドニーの気候がエディンバラより過ごしやすいことも嬉しい。二度目の在外研究の地はシドニーで決まり!

パースは、下の写真を見ればおわかりいただけるように、本当に美しい都市なのだが、目下、バブル経済の真っただ中にあり、物価が驚くほど高い。おおよそ日本の二倍である。標準的なアパートの家賃を聞いて、耳を疑った。シドニーよりも高いのだ。ちょうど今の季節は真冬だが、日本の晩秋くらいの気温で、底冷えせず、かなり過ごしやすいが、夏の暑さが厳しく、気温は40度近くにまで達するらしい。期待していたほど、住みやすい街でもないらしい。「二度目の在外研究をオーストラリアで送るなら、シドニーかパースで・・・」とぼんやり考えていたが、今回の出張でパースは選択肢から消えた。訪れる街であっても、住む街ではないよなぁ。*3

パースはインド洋に面しているため、中心部を流れるスワン川をしばしばイルカがのぼってくる。ラッキーなことに、イルカの「こんにちは」に二度も遭遇することができた。

Western Australia州の地ビールLettle Creatures Pale Aleは、これ以上の望みようのないくらいの、僕好みの味。何倍でも飲める。これに対抗できるのは黒ホッピーくらいか?(笑)

すべての意味で充実した今回のオーストラリア出張であった。*4

*1:http://d.hatena.ne.jp/nakcazawa/20100315

*2:HETSAに初めて参加したのは2008年だが、自分でもまさかこれだけオージー・コネクションのお世話になるとは当時は想像できなかった。自力で開拓したコネクションだからこそ思い入れがあって、余計に大事にしているのかもしれない。エディンバラはあくまでT中先生の教え子として受け入れてもらった街だから。

*3:スターバックスを一軒も見かけなかったのだけれど、何か特別な理由があるのだろうか。逆にSUBWAYは「100メートル間隔で出店しているのではないか」と思われるほど何軒も見かけた。

*4:しかし、野菜はダメだな。おかげで最後はビタミン不足で口内炎を発症。野菜の充実度はやはり日本。