Neil and Rush and Me

Neil PeartのドラムとRushの音楽をこよなく愛する大学教員の日記(雑記)帳です。

ヴェリタス杯に初出場

ヴェリタス杯@明治大


一晩の睡眠だけで疲れがとれず、なかなかベッドから起き上がれなかった。8時半過ぎにようやく起床し、9時半前にホテルを出る。新橋→(銀座線)→渋谷→(京王井の頭線)→明大前という移動ルートだが、大事をとって早く出発しすぎたようで、11時集合なのに10時過ぎに明大前駅に着いてしまった。駅前のスタバで1時間ほどつぶす。17期生17名全員が11時に無事に集合し、たまたま落ち合った会場担当のTKHSさんに連れられて明治大学和泉キャンパスへ。

ヴェリタス杯は関東地区の大学教員有志によって運営されているプレゼン大会で、今年が第14回ということなので、それなりに長い歴史を有する。nakcazawaゼミが長年出場してきた西日本インカレは、日経BP社主催ということで、ビジネスプランニングに関するプレゼンが大半を占め、出場ゼミは経済学部・商学部が、出場学年は3回生が圧倒的に多い。出場チームも多く、運営もしっかりしているが、かなり厳格なルールのもとで運営されているため、自由度が低い。プレゼンの内容も方法も特定の型に沿ったものになりやすい。これに対して、ヴェリタス杯は法学部や国際系学部や理工系学部からも出場しており、参加学年も1-4回生と多岐にわたり、その多様性と自由度の高さが魅力である。ただ、大学教員有志の自主的な運営によって支えられている大会であるため、規模を拡大することが困難で、6-7チームが出場チーム数の上限である。そのため各ゼミから1チームしか出場できず、どこのゼミでもゼミ内予選を行う必要が生じる。ヴェリタス杯には以前から興味を持っていたものの、出場できるのが1チームだけというのがネックだった。ゼミ生全員に本番の舞台を経験させたいという気持ちのほうが強かった。しかし、17期生の間には良い意味でのライバル意識が感じられ、出場1チームという制約が全体の底上げに寄与することが期待できたし、東京遠征への機運も盛り上がったので、10期生から7年連続で出場してきた西日本インカレへのエントリーを今年はとりやめて、ヴェリタス杯に出場することにしたわけである。

7月2日のゼミから準備をスタートしたので、準備期間は5か月以上に及んだことになる。結果であるが、今年のヴェリタス杯には6大学7チームが出場し、nakcazawaゼミは上位3チームに入らず残念ながら入賞を逃したが(優勝は群馬県立女子大学)、KW君とKRG君がそれぞれベスト・プレゼンターおよびベスト・エンターテイナーとして個人表彰された。

初出場してみての個人的印象であるが、運営も審査も予想していた以上にしっかりしており、これが教員の自主的な運営で十数年続けられていることに感心した。西日本インカレのようにシリアスすぎず、随所に遊び心やリラクゼーションが見られるとても良いプレゼン大会だ。プレゼンの内容もやり方も自由度が高いので、とりわけ哲学をテーマに掲げている17期生以降のnakcazawaゼミにとっては、西日本インカレよりも合っているのはないか。17期生の場合、出場できなかった2チームはさぞかし悔しい思いをしただろうが、その悔しさが本物であれば、これで終わりにせずに来年西日本インカレに出場することもできる。

審査員のTKHSさん(会場担当者とは同姓の別人)とNHRさんの講評はきわめて納得のゆくものだったし、どこのプレゼン大会でも基本的な評価ポイントが変わらないことを改めて確認できた。今年のnakcazawaゼミのプレゼンはたしかに笑いたっぷりの楽しくわかりやすいものに仕上がった。それがゼミ内選考で高い評価を獲得したいちばんの理由だろう。ただ、肝心のリサーチ(プレゼン本体)のほうは、僕が危惧していた「お手軽に作った」感が最後まで払拭できなかった。ゼミ生たちは主観レベルで「自分たちはよくがんばった」と思っているだろうし、思ってもらってかまわない(実際ほめてやりたい)のだが、同時に、高い評価を獲得して入賞するには明らかに足りないものがあったことも理解してもらいたい。その「足りないもの」を僕なりにまとめると、以下の2つになる。

1つは、プレゼンのストーリーの根幹をなす事実やデータの収集・作成・確認に関してどれだけ汗を流したか、である。そこをネットやテレビからの「借りもの」の情報ですませて、その信憑性の吟味を怠っていては、プレゼンの屋台骨がぐらつくことになる。自分たちで企業インタビューに行くもよし。アンケート調査を行うもよし。事実・データを自前で入手する努力を行うべきである。それが難しい場合でも、そのテーマに関する基本文献を何冊か読めば、信頼できる事実・データの絞り込みを行えるはずである。情報があふれかえる時代に生きているからこそ、目の前の情報はどれだけ信用できるか、という懐疑がいっそう重要になる。だからこそ、審査員のNHRさんは講評の際にしつこいくらいに「ネットやテレビの情報がいかに信用できないか」を説いてくれていた。自前の企業インタビューもアンケート調査もなく、テレビ番組「カンブリア宮殿」に多くの基本情報を依拠したプレゼンが、「お手軽に作った」感を審査員(実際には教員全員)に与えてしまったのは当然であった。西日本インカレであれ、ヴェリタス杯であれ、上位入賞を目指そうとすれば、基本情報を「借りもの」ですませず「自前」で調達することが必須であるし、それを「めんどくさい」と思った瞬間に、結果は半分以上決まってしまっていると言えよう。

もう一つは、15分なら15分、20分なら20分のプレゼン用原稿(台本)をきちんと作成することである。自分のしゃべりに自信がある者ほど、こうした作業を軽視し、「何とかできるはず」と過信する。しかし、それは成長を妨げる良くない考え方だ。練習でできないことは本番でできないので、できるようになるまで繰り返ししっかり練習する必要がある。これは楽器奏者である僕がつかんだ人生の真理と言っても過言ではない。今回は最後の参考文献の紹介を本番で落としてしまったが、これは大減点につながったはずである。プレゼンの「締め」のセリフを決めていなかったから、こういう初歩的なミスをおかしてしまった。また、笑いをとってから、プレゼン本体に戻る時のセリフも決めていなかったためか、よれよれであった。これも審査員からはっきりと指摘されたので、大減点ポイントであろう。少しの練習で防げるミスを「そこまでやらなくても本番ではちゃんとできるだろう」と思ってしまった時点で、入賞は遠のく。低い評価には明確な理由がある。教員の慰労会で審査員以外の先生方の評価も聞いてみたが、評価の個人差はほとんどなかった。「nakcazawaゼミさんはたしかにおもしろかったけど、しかし・・・」なのである。実際、過去に西日本インカレで入賞したプレゼンはすべて、原稿(台本)を作らせた。最初に少し長めのラフな原稿を作らせて、制限時間内におさまるように冗長な表現を削っていく。その添削作業が教員である僕の仕事である。覚えやすい&聞き取りやすいように、一文を短くするなど、工夫を凝らす。こうして情報密度の高い引き締まったプレゼン(台本)ができあがる。それを繰り返し何度も練習すればまず間違いなく入賞できる。これが十数年の経験を通じて僕が培ったプレゼン指導のノウハウの核である。しかし、残念ながら、実行できた学年はそれほど多くなかった。締切ギリギリにならないとガンバルモードになかなかなってくれず、時間不足が常に壁となってしまった。早め早めの準備は、「言うは易し、行うは難し」なのである。

以上2点ができていなかったので、上位入賞できなかったのは当然であると僕は考える。17期生にはこの大会を通じて学んだこと・反省すべきことをふりかえって、18期生にしっかりと伝えてもらいたい。こうした「ふりかえり」を軽視する悪しき傾向が最近(15期あたりから)強まってきている。「やりっぱなし」から学べることはきわめて少ない。逆に言えば、学ぼうとする意欲があるならば、「やりっぱなし」にはならないはずだ。審査員の講評時にメモをとっている人の少なさが気になった。(とはいえ、交流会の際に他大学の学生に積極的に交流しようとしていた態度は、他大学の先生から高い賞賛をいただいた。)

nakcazawaゼミ17期生はまだまだ発展途上である。4回生になっても3回生以上に積極的に活動しよう。就活と卒論だけにしたら、絶対にあかん。後悔するよ。17期生たちよ。